ガラスの歴史にその名を残す―日本現代ガラスの先駆者・藤田喬平
はつかいち美術ギャラリーで開催されております「ガラス工芸の精華―ガレから現代まで―」展、講演イベントの第2段として、「ガラスの歴史にその名を残す―日本現代ガラスの先駆者・藤田喬平」の特別講演を聞きに行ってきました。
講師は前広島市現代美術館副館長で美術評論家の竹澤雄三先生でした。
1981年に第一回現代ガラス展が北海道立近代美術館で開催された際に、竹澤先生は学芸員として世界の現代ガラス作家の作品を収集するため、藤田喬平先生と深くかかわったそうです。ハーヴィ・K.リトルトンはじめ、エルヴィン・アイシュなどと世界的に活躍されているガラス作家との交流も藤田先生によって実現し、その時の楽しいひと時の思い出を交えながらお話しされていました。
また、藤田喬平先生がどのようにガラス文化を切り開いていかれたかにについてもお話をしてくださいました。まだ日本のガラス産業の中でデザイナーと職人が分業で制作を行っていた時代に、藤田先生は、アートの素材としてガラスをとらえ、自分でデザインされ、自分で制作し、販売も行う作家としての取り組みをしてきました。
風呂敷に詰めた作品を、銀座の街を販売しながら歩いた話は、その当時の苦労がうかがえます。
今回の展覧会でも、出品されている「飾筥」は日本の伝統的な美意識を感じさせる作品として海外から高い評価を受けた作品として紹介されています。
その時のエピソードとして「箱の中に何を入れるかと」の問いに「あなたの夢を入れてください」と答えられたことなど、当時担当された竹澤先生ならではのお話が多くあげられ、最後に「日本の現代ガラスが藤田先生をはじめ先人たちのガラスへの情熱によって切り開かれ、現在活動をしている作家たちに受け継がれ発展していくことを願っている」と講義が締めくくられました。
竹澤先生とは12年前の1996年に 初めてお会いしました。
当時、私は故郷である広島で展覧会ができないかと、広島現代美術館に足を運びました。そこでまだ何も知らない学生の私に、いろいろとガラスや作家活動についてアドバイスをいただいた事を覚えています。
この度、竹澤先生にお会いし、現在取り組んでいる制作活動についてお話しすることができました。
「10年前にあった学生がいまガラス作家として活動しているというのはうれしい」とお言葉を頂き、さらに活動の幅を広げていきたいと思いました。
池本